Now Loading...
Menu
menu
Home
寺 院
神 社
史跡・名所
美術館・博物館
ごはんとおやつ
京都いろいろ
旅の記
録
・旅の記
憶
Home
京都いろいろ
世屋高原
世屋高原
〜 ただ一本の桜に逢いに
京都府宮津市
2019. 4.23
前夜に宿泊した伊根から国道178号線を海沿いに宮津方面に戻り、世屋高原を目指して波見口を右折して上って行くと、左手に広がる「丹後海と星の見える丘公園」の入り口ゲートが見えてくる。
海を臨む景色が素晴らしく、それを眺めながらお弁当を食べたりちょっと休憩のできるテラスがある...と聞いていたので立ち寄ってみるが、セミナーハウスを過ぎて奥に進んで行っても全く人の気配がない。公園とはいえども、森のような木立が道の際まで茂っている。さすがにそんなところで一人でコーヒーを飲みながらのんびり休憩する度胸もないので、美しい眺望を数枚だけカメラに収めて車に戻った。
緑が豊かで子供が楽しめるような場所がいろいろあるようだ。きっと休日には家族連れで賑わうのだろう。
丹後海と星の見える丘公園
公園を出て宮津カントリークラブのコースの間を通り抜ける道から府道75号線に合流し、道はさらに登りになっていく。
センターラインがなくなって細い道になりいくつかのカーブを過ぎると、左手の棚田の中にこんもりとした繁みを背に立つ鳥居が見えてくる。これが「世屋姫神社」。まずは松尾の一本桜を目指しているので帰りに立ち寄ることにして通り過ぎ、さらに登っていくと左手に六体のお地蔵様が並ぶ祠があり、そのあたりから道は上世屋の集落に入る。
ちょうどお昼時だからなのか全く人の気配はない。このあたりの景色も帰りにゆっくり眺めることにしてとりあえずは素通りしてつづら折れの坂道をさらに登っていく。
世屋姫神社
上世屋集落入口にある六地蔵
上世屋の集落と遠く若狭湾を見下ろしながら登る道はやがて木立に遮られ、世屋高原入口の標識とともに唐突に右手に伸びる2車線の直線道路が現れる。丹後縦貫林道だ。右折すると切り開かれた木立の中に聖観音が祀られていた。
そのまま真っ直ぐ進むが程なくセンターラインは消えてまた道は細くなる。左折すると木子の集落へ至るが、そのまま直進する。木立が途切れると眺望が開けるものの、とてもよそ見などしていられない道が続く。
右手の「世屋高原家族旅行村」に真っ白な花をつけた木が見えたので砂利を敷き詰めた敷地に少し入って眺めさせていただいた。背後の岳山には展望台があるそうだが、残念ながら脚の不調を抱えている私が一人では登るわけにもいかない...
世屋高原入口の聖観音
世屋高原家族旅行村入口あたりから見た岳山
今は廃墟のようなレクリエーションセンターのところで丹後縦貫林道と別れ松尾を目指す。
相変わらず対向車に会ったら離合に苦慮しそうな道だが幸い一台も出会うこともなく、「一本桜」と大きく書かれた手作りの標識に導かれて迷うこともなくたどり着いた。
急に開けた眺望、想像していたよりずっと急な斜面の棚田。
すっかり葉桜となった姿を覚悟で来たのだが、だいぶ前に満開を迎えたはずなのにまだ薄紅色をまとった姿で、松尾の一本桜は若狭湾を見下ろしていた。
満開の時期はたくさんのカメラマンで賑わうらしいが、今日は誰もいない。カメラマンはもちろん、周りの棚田で働く人影すらも。全く私ひとりだけの世界...
松尾の一本桜
一本桜と呼ばれる桜は日本中至る所にあるが、かつて写真で見たとき、それらのどの木とも違う「孤高」という言葉を連想させるこの桜木に心惹かれた。
しかし遥々ここにたどり着いてその傍らに立ってみると、鶯の鳴き声や暖かな微風に包まれて、実は優しく柔らかな印象を漂わせていることに気づく。
幹や根に傷みを抱える老木だと聞くが、なんとかいつまでもこの地で、穏やかに生きながらえて欲しいと心から願う。
足元に花びらが残る道をゆっくり歩いて行きつ戻りつしながら眼下の海を眺める。懐かしい、とも少し違う、ただ立ち去りがたい思いにかられる不思議な風景。
満開の姿も見て見たい。私もそろそろ老木、また逢いに来られるだろうか...
一本桜から若狭湾を臨む
一本桜
松尾からの帰り道、再び上世屋の集落が見えてくる。住民の高齢化や過疎化を移住者が支え、無農薬の昔ながらの稲作や狩猟と新しい生業の試みで成り立つ集落だと聞く。印象的なウエブサイトやSNSの情報発信もあって、昔からこうした生活に憧れる私はついついここに生きる人々の暮らしに親近感を抱いてしまった。しかし憧れだけでは成り立たない現実があるから、私はその暮らしを選ばずこうして旅人の一人としてここにいる。
ウエブサイトで見覚えのある顔の方が、庭先で何か作業をしている。先ほどは誰もいなかった棚田のあたりに、仕事をする人の姿も見られる。
「限界集落」などと思ったら失礼だ。若狭湾を見下ろす幾段もの棚田を抱く上世屋は、田植えを控えて水を湛えた田もあり、生き生きと、きらきらとしていた。
上世屋集落
上世屋の棚田と若狭湾
海の京都ふたたび
京都いろいろ
pagetop