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こちらも特別公開中の興臨院。人影も見えず空いている様子。
しかし、方丈前に出てみて目にした光景に唖然とする。東洋人の若い女性が二人、庭に向かって足を投げ出すように腰掛けて、コンビニの袋から出したプリンのようなものを食べている。左手の花頭窓には、やはり東洋人の男性がその窓枠に伸ばした両手をかけて凭れるように身を預けて休んでいる。
お寺の案内らしき年配の男性が一人いらっしゃるものの、特に注意はなさらない。もしかしたら昨今決して珍しい光景ではないのかもしれない。
そんなわけもあって方丈前は素通りしてそのまま廊下を回り、奥に見える茶室「涵虚亭」へ。ここで同じくらいの年配の女性と出会う。お友達と旅行に来ているそうだが、それぞれに見たいものがあるときは別行動をするのだとか。旅先で出会うお寺が好きな方との会話はちょっと楽しい。ここに来る前に二人とも拝観した黄梅院の美しい庭のことや、一番好きなお寺はどこか、おすすめの場所はどこか、など、思いのほか長い時間立ち話で盛り上がった後、お互いたくさん楽しみましょうね、と小さく手を振って別れた。
それを聞くともなくにこやかに眺めていた先ほどの案内の男性の方が、方丈の方へと誘ってくださった。床紅葉のように座卓に映り込む春紅葉が撮れるところや、ぜひ花頭窓越しに庭を撮ってくださいなどと、ベストスポットを示してくれる。先ほど私が写真を撮れないまま素通りしたのを判っていたのだろう。
デザートタイムだった女の子たちは、食べたカップやスプーンをきちんと袋に収めて座っていた場所を片付けている。花頭窓に体を預けていた男性ももういない。最初に感じた違和感も消えて、なんだかおおらかな気分になって方丈を後にした。
2019.4.24