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醍醐寺の白壁沿いに旧奈良街道を北上して門をくぐると、まず左手に三宝院の門。とにかく美しい庭園だからぜひ!と以前から勧められていた場所へ、ようやくの訪問。
建物に入ると屋内はもちろん庭も撮影はいっさい禁止。だからこそこの目にしっかり焼き付けなければと、むしろじっくりと鑑賞することができた。
目の前には大きな池。長い時を経てそこに在る松や幾種もの樹木たち。書院の縁に座して眺めれば、位置から考えてそれほどの距離はないはずなのにかなりの奥行きを感じさせる。蛇が棲むと聞かされた鶴島・亀島、京都検定の問題にも登場した藤戸石、はるか遠くに水の流れ落ちる音…しかし決して遠くはない。遠く感じる不思議な錯覚。
通常拝観では本堂までは立ち入ることができなかったが、表書院やそこに連なる部屋に長谷川等伯一派による襖絵も見られ、美しく贅沢な空間を楽しんだ。
三宝院を出て桜馬場を進み仁王門を抜けると、いよいよ下醍醐の中心エリアへ足を踏み入れる。深い木立の間からご本尊薬師如来座像を安置する金堂の朱色が覗き、さらに進めば五重塔が姿を現す。品格のあるスモーキーパステルに彩られて、堂々たる姿。
鬱蒼とした森に抱かれたような参道をさらに進み日月門を抜けると、西国三十三観音霊場第11番札所の観音堂が見えてくる。ご本尊の御朱印もこちらでいただく。にこやかに御朱印帳を受け取って書いてくださったのは、ハッとするほど亡き父によく似た面差しの方だった。
観音堂の横に広がる林池、鮮やかな朱色の太鼓橋と弁天堂。ここが下醍醐の一番奥。さらに木立の間を先に延びる細い道。いつかこの先の上醍醐を訪ねられる日は来るだろうか…。軽く合掌して来た道を戻る。
梢を渡る風に乗って聞こえてくる音曲が次第に大きくなり、不動堂前の護摩道場に修験者姿の方々が集結している。大峯山花供入峰…とのこと、しばし見学客の一人となる。
2015. 6. 9